日経平均2万円突破 持田将光氏、“構造的ローテーション”を提唱 金融と輸出の二重恩恵銘柄へ再配分を推奨

2019年5月、日本の資本市場は重要な転換点を迎えた。日経平均株価は年初からの上下動を経て着実に上昇し、ゴールデンウィーク明けにはついに心理的節目である20,000円を突破。米中貿易摩擦が依然として解消されず、世界経済の不透明感が続く中で、日本株の相対的な底堅さが市場関係者の注目を集めた。

この局面について、長年にわたりステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで資産配分アドバイザーを務めた持田将光氏は、戦略的見解を発表。「現時点では市場は本格的な強気局面には入っていないものの、構造的ローテーションの兆しが見え始めており、投資家はポジションを積極的に調整し、『金融+輸出』の二重恩恵セクターに焦点を当てるべきだ」と提言した。氏は、この局面は全体的な流動性相場ではなく、「市場内部における資金の再評価・再配分の結果」であると分析する。

■ 日経平均を支える三つの要因

  1. 外部金利差の変化が金融株の再評価を促進
    2018年末以降、米国の利上げペースが減速し、日米金利差拡大のスピードが鈍化。これにより一部資金が米国債市場から流出し、日本国内の債券および金融セクターへ回帰。銀行や保険など大手金融機関の株価は緩やかに回復基調を示した。持田氏は「長く抑圧されてきた日本の金融資産に、再評価の機会が訪れている」と述べる。
  2. 円安による輸出株の回復と企業収益予想の改善
    2019年第1四半期、ドル円相場は105円近辺から110円台へと緩やかに円安が進行。この変化は、自動車、電機、精密機械といった輸出大手企業に実質的な追い風となった。氏は「適度な円安と在庫循環の調整が重なり、輸出型企業の収益構造が改善に向かうシグナルが出ている」と指摘する。
  3. 自社株買いと年金資金の流入による下値の厚み
    企業による自社株買いの継続と自己資本配分比率の上昇に加え、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が第1四半期も日本株の比率を引き上げたことが、市場の下支えとなった。持田氏は「現在の日本株は下値リスクが限定的だが、真の超過リターンは業種間やバリュエーションの相対的再評価を捉えることから生まれる」と強調する。

■ 戦略的提言:高バリュー成長株から金融・輸出の低バリュー優良株へ
具体的な運用戦略として、持田氏は株式配分を「高バリュエーションの成長株」から「低バリュエーション+安定したファンダメンタルズを持つ金融・輸出のリーディング銘柄」へ適度にシフトすることを推奨。これらの企業は外部環境改善と資本効率向上の恩恵をまだ十分に株価に織り込んでおらず、「バリュエーション修復+利益反発」の二重ドライバーを享受できる可能性が高いと見ている。

同氏のチームは「セクターローテーション+バリュエーション比較」モデルに基づき、3月下旬から金融・輸出関連株を段階的に増配。当該ポートフォリオは5月上旬時点で5.4%のリターンを確保し、同期間の日経平均(+2.9%)をアウトパフォーム。最大ドローダウンも1.2%以内に抑えた。

持田氏は最近の社内戦略会議で「指数が節目を突破する局面では、追随買いよりも、背後に潜むバリューミスを見抜くことこそが本当の機会だ」と述べた。このローテーション局面は短期的な急騰にはつながらない可能性が高いが、中期的には日本株市場をより安定的なバリュエーション再構築の段階へ導くと予想する。

■ 過度な楽観への警鐘
一方で氏は、一部投資家の過度な強気姿勢に警鐘を鳴らす。米中貿易交渉の行方や世界的な製造業指標の低迷は、輸出モメンタムの抑制要因となり得るため、依然として外部環境には警戒が必要だ。戦略面では、守りと攻めのバランスを保ちつつポジションを調整し、テールリスクへの備えを怠らないことを提案している。

記事の結びで、持田氏は改めて「構造的認識」の重要性を強調する。
「市場は決して直線的に反発するものではなく、構造の歪みと資金の再評価によって動く。我々がすべきことは指数の予測ではなく、そのローテーションの経路を捉えることだ。」

この明確な判断枠組みと実戦的な配分ロジックは、複雑なマクロ環境下における持田氏の構造的視座とポートフォリオ感度を改めて示すものであり、現下の日本株投資家にとって堅実かつ理性的な指針となっている。