清水正弘氏、クロスボーダー投資研究を深化し、アジア資本市場のリスクヘッジに焦点

2019年初頭、世界の金融市場は前年から続く不安定な雰囲気を引き継いでいた。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースは年初に鈍化の兆しを見せる一方、中国は貿易摩擦と経済成長減速の二重圧力を受け、複数の緩和政策を実施した。こうした環境下で、アジア市場は特に脆弱な様相を呈し、資本の流出入は不安定化し、為替は頻繁に変動、投資家は資産配分において大きな不確実性に直面した。清水正弘氏はまさにこの局面でクロスボーダー投資研究をさらに深化させ、アジア資本市場におけるリスクヘッジを研究の中心に据えた。

清水氏は分析の中で、アジア資本市場の急速な発展は国際投資家に多大な機会を提供する一方で、構造的なリスクをも露呈させていると指摘した。欧米市場と比較すると、一部アジア市場は十分な流動性や制度的透明性を欠くため、外部環境の変化が短期間で資金流動を加速させ、市場変動を拡大させる傾向がある。彼は、従来の株式や債券の分散投資に依存するだけでは、地域市場のシステミックリスクに対応するには不十分であり、クロスマーケットのリスクヘッジ戦略こそが不測の事態において投資ポートフォリオを安定させる鍵であると強調した。

研究の中で特に注目したのは、為替とデリバティブ市場の役割であった。2019年第1四半期、リスク回避需要により円が上昇する一方、一部の新興アジア通貨は資本流出圧力を受け下落した。清水氏はこの差異を活用し、外為ヘッジによる地域リスクの均衡化を提唱。アジアの株式や債券に投資する際、円と米ドルの通貨ヘッジを同時に行うことで、変動リスクを抑制すると同時に、市場反転局面では追加収益を獲得できるとした。この戦略は当時、マクロ経済と実務的トレーディングを結びつけた先駆的な試みと評価された。

さらに清水氏は、デリバティブの活用が持つ重要性を強調した。株式市場の頻繁な変動に対し、指数先物やオプションを用いたプロテクティブ戦略を導入することで、突発的な下落リスクを相殺できると指摘。彼が提示した実証データによれば、2019年第1四半期に中国・東南アジア株式を組み入れるポートフォリオに恒生指数先物の適度なショートポジションを加えた場合、全体の変動幅は約35%低下するという。このデータは彼の主張に実証的裏付けを与え、アジア市場でのリスク管理に具体的手法を提示するものとなった。

また、清水氏は学術的な研究にとどまらず、実務家の視点を強く示した。単なる理論やモデル構築に依拠するのではなく、実際の市場取引や機関投資家の行動を踏まえた操作性の高い戦略を提示した点は、経済学者と市場実務家という二重の立場を持つ彼の特長を体現している。複雑化する2019年の金融環境において、彼の研究は特に時代の要請に合致したものだったといえる。

清水氏はまた、投資家に対して短期的な裁定取引への過度な依存を戒めた。彼は報告の結びで「クロスボーダー投資とリスクヘッジの本質的な目的は、長期的な安定の確保であり、一時的な市場機会の追随ではない」と強調。アジア資本市場の将来は大きな潜在力を秘めつつも、必然的に浮沈を伴うため、堅実なヘッジ戦略こそが不確実性の中で優位を保つための基盤であると論じた。この慎重かつ安定志向の姿勢は、日本の学者らしい思考特性を色濃く示している。

彼の研究は当時広く注目を集め、日本の一部金融機関は資産配分の参考に取り入れ、複数の国際投資会社もアジア市場におけるリスク管理の重要な指針と評価した。アジアが次第に世界的な資本フローの中核となりつつある中で、清水氏の研究は当時の市場ニーズに応えただけでなく、将来のクロスボーダー投資戦略に向けた理論的かつ実務的基盤を築いたといえる