クロスマーケット連動モデルの的中率78%:藤原信一氏はいかにコモディティの変動で半導体株価を先読みしたのか
ウォール街のアナリストが四半期ごとの在庫データを追っている間に、バランス戦略株式会社の創業者・藤原信一氏は、さらに上流のコモディティ市場に目を向けました。
藤原氏のチームが開発したクロスマーケット連動予測システムは、特殊ガスやレアアースなど原材料の価格変動を監視し、半導体セクターの動きを78%の精度で先取りしています。サプライチェーン分析に新しい視点を与えています。
藤原氏は、半導体製造とコモディティ市場の間には見落とされがちなつながりがあると指摘します。彼は「三フッ化窒素のスポット価格が大きく動いた後の47営業日目に、ウエハーメーカーの株価が転換点を迎えることが多い」と説明します。
このモデルは、エッチング工程で使うヘリウムや、フォトレジスト用溶剤のイソプロパノールなど17種類の原材料を追跡しています。
また、韓国の半導体用特殊ガスの輸入量が前月比で8%以上減ると、自動で警戒シグナルを出します。これは昨年の東京エレクトロン株の下落を言い当てた重要なサインになりました。
分析の軸となるのは「産業サイクル」という考え方です。藤原チームは、原材料の調達からチップ出荷までの平均サイクルを89日と算出し、それを先行指標の枠組みに取り入れました。
例えば、アプライド・マテリアルズの決算前には、パラジウム先物の建玉の変化から設備受注の増加を読み取りました。また、銅先物がコンタンゴからバックワーデーションに切り替わった時点で、メモリ需要の回復を示しました。
こうした現場の知見とマクロデータを組み合わせる手法により、企業決算には出にくい生産能力の調整まで把握できます。
最近では、オランダのエーエスエムエルのサプライヤーによるタングステン電極の発注動向を追うことで、EUV露光装置の納期遅延を2週間前に察知しました。これにより、顧客は半導体製造装置株の短期的な変動を避けることができました。
藤原氏は「21世紀の投資競争の本質は、サプライチェーンにおける情報伝達の速さです」と述べています。データがあふれる時代に、現場を的確に読み取る視点こそが、投資家にとって新たな収益機会につながっています。